
↑ この絵は
エドヴァルド・ムンクが29歳の時に描いたものです。
ムンク(1863-1944)は、「叫び」でよく知られたノルウェーの画家ですね。
「叫び」同様、ムンクの絵には、「不安」や「絶望」「死」の影が潜んでいるものが多いのですが、この作品にも、どことなく「不安感」が漂っています。
モチーフの捉え方もさることながら、画面全体を閉める藤色がかった青色は、爽やかというよりも、神秘的ですね。

ここで述べている
「不調和の調和」とは、調和の中でも、安定した調和ではなく、どことなく不安定感を持った調和、
つまり、配色技法のコンプレックスハーモニーのことです。
コンプレックスハーモニー(コンプレックス配色)について次に、復習しておきましょう。
色相環を見ればわかるように、
黄色は本来、明るい色。
それに対して、青や青紫は本来、暗い色になります。
これが自然の摂理です。
黄→橙→赤の順に暗くなり、
黄→緑→青の順に暗くなる、
のです。
これに対し、
黄色なのに暗く、青なのに明るい色の組み合わせは、
自然の摂理に反することになります。
これがコンプレックスハーモニーです。
さて、ムンクの絵画は「象徴主義」と言われていますが、
「象徴主義」とは何でしょうか?
「象徴主義」とは
自然主義と対照的に、物事を忠実に描かず、
魂を表現したり、印象や感覚を探求するもの。
その魂の表現に「色彩の効果があります。
では、
ムンクの絵の色彩について象徴主義の観点から見ると、
ムンクの深層心理を表すように、
緑や紫が多い点が挙げられます。
(緑と紫はともに中性色で、病的な心や体が欲する色です)
また、
ムンクの絵画には、上の例のように、
コンプレックスハーモニーが見られます。
コンプレックスハーモニーとは、
黄色は明るい色で、青っぽい色は本来暗い色というのが「自然の摂理」。
その自然の摂理に逆らった配色がコンプレックスハーモニーです。
明るい青や、明るい青紫(藤色系)と
暗い橙(茶色)は、コンプレックスハーモニーになりやすい組み合わせです。
次は、ムンク晩年の作品です。

さて、
緑と紫について復習しましょう。
緑=黄(暖色系)+青(寒色系)
紫=赤(暖色系)+青(寒色系)
です。
緑と紫は、暖色と寒色という相対する性質を内包する複雑な色です。
人は年老いたり、
身体が疲れたり、
心が病んだりすると、
緑や紫に惹かれます。
コンプレックスハーモニーに加えて、緑や紫が、ムンクの絵画に与える効果を感じてみましょう。、

さて、緑と紫が反対色であることは、すぐわかりますか?
色相番号を覚えておくといいです。
緑(色相番号12)と
紫(色相番号22)は反対色であり、
2色の組み合わせは
コントラストのある配色となっています。
「コントラストのある配色」の場合、
オレンジ系と青系(暖色系と寒色系)や
茶系と青系(暖色系と寒色系)や
黄系と青系(暖色系と寒色系)や
赤系と緑系(暖色系と寒色系)
など、「暖色+寒色」だけではなく、
緑系と紫系の
「中性色+中性色」があることを知っておきましょう。
世俗離れした、
良く言えば、神秘的な
悪く言えば、病的な
イメージになります。