
2016年9月26日、アメリカ大統領選に向けた第1回テレビ討論会が行われました。
国民が直接投票する米国の大統領選は、視聴率が40%を超えることもある注目度です。
「何を語るか」もさることながら、それ以上に、立ち振舞、ファッション、一瞬の表情、しぐさで印象が左右され、文字通り、命がけのイメージ戦略で臨みます。
2人が壇上に登場し、まず目を引いたのが「ヒラリーの赤」vs「トランプの青」。
星条旗の2色を分け合い、それぞれの色を味方に、明確なメッセージを発信していたのが印象的でした。
まず、民主党のヒラリー・クリントン候補の最大の懸念要因は「健康問題」。
真っ赤なパンツスーツと、真っ赤な口紅で、「強さ」「たくましさ」を演出。「病気」のイメージを色彩のエネルギーで払拭しています。
一方、共和党ドナルド・トランプ候補は、過激な発言で、熱狂的な支持者も多いものの、「危険な男」「クレイジー」と彼の政策に不安を抱く人も多いようです。
彼は明るい青のネクタイで、「落ちつき」や「冷静さ」という、イメージを演出しているのです。トークも、トランプ氏にしては、抑えめだったようです。
つまり、パワーの赤、冷静さの青という、互いに自分に足りない要素を「色彩のパワー」で見事に補っていたのです。
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Q.さて、最初に大統領選のテレビ討論会が行われたのはいつだか知っていますか?
A.1960年、民主党のケネディ候補と 共和党のニクソン候補の対決が最初でした。この時初めて、アメリカ国民と大統領候補者は、テレビ効果の怖さと、見た目の大事さを知ったのです。
「ラジオを聴いていた人はニクソン氏、テレビを見た人はケネディ氏が勝ったと思った」と当時言われました。
ニクソン候補は、テレビ用の化粧すらしていなかったのです。ネクタイが云々と悪評でした。
そして、結局、テレビ討論を制したケネディ氏が勝利し第35代大統領になりました。
テレビ討論会の威力の大きさに、以降、大統領候補者たちは、テレビ討論会を敬遠することになります。その後、テレビ討論会は76年まで実現しなかったのです。
何万字の政策よりも、1秒の見た目が大切なことを、世界中に示した1960年のテレビ討論会でした。
トランプ&クリントンの第2回テレビ討論会も注目していきたいです。